医師の年収は、他の職業に比べると比較的高収入。しかし、医師の中でも経験や年齢によって年収が大きく異なるのをご存知でしょうか?
今回は医師の年収の現実と、年収アップを狙う医師がやるべきことについて解説します。
医師を目指すうえで大きなモチベーションとなるのは「年収」です。これから医師を志ている方なら、どのくらいの収入があるのか気になるところでしょう。ここでは医師の平均年収と手取り額などについてご紹介します。
厚生労働省の「令和年度賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は以下の通りになっています。
令和3年度 医師の男女別で見る平均年収
男女計 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1,378.3万円 (45.3歳・7.7年) |
1469.9万円 (46.8歳、8.0年) |
1,053.7万円 (39.9歳、6.4年) |
※()内は平均年齢と勤続年数を表しています
※「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出しています
この平均年収は、企業規模10人以上であることを条件に、全年齢を対象に算出されたものです。
しかし、この平均年収を見て納得がいかない人も少なからずいるのではないでしょうか。それもそのはず、平均年収を上回ることができるのは、経験年数が5〜10年を超えたあたりからが一般的だからです。
というのも、医師には5年の研修期間があります。この研修期間は平均年収が約470万円と低く、研修期間が終わる30代になったあたりから、ようやく約950万円に引き上がります。
その後キャリアを積んでいきながら年齢と経験年数ごとに年収が上がっていきますが、令和元年賃金構造基本統計調査のデータでは、上記の平均年収に到達するのは40〜44歳となっています。
勤務先の条件によってはもう少し早い段階で医師の平均年収に到達することもありますが、若手のうちは思ったほど収入が多くないというのが現実でしょう。
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画像引用:厚生労働省|「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について
上記のグラフを見てもわかるように、開業医の年収が病院勤務の医師よりも1.7倍高い傾向があります。
厚生労働省「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」によると、入院施設のない開業医の年収は約2,491万円でした。
クリニックや診療所の経営状況・患者数によって、収入を増やすチャンスがたくさんあります。患者数が増えれば、売り上げも増加し、経済的な安定感が得られるかもしれません。
また、開業医は自身の診療方針や治療方法を自由に実践できるメリットがあります。患者との信頼関係を築きながら、理想的な医療サービスを提供できるでしょう。
ただし、開業医として成功するには、経営スキルやマーケティング力が必要です。患者集めや他店舗の競争に対処するための努力を行わなくてはなりません。そのため、開業医になる前には、熟考と準備が重要です。
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勤務医の手取り額は、給与から各種控除や保険料を差し引いた金額で、所得税、住民税、健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以上)、雇用保険などが控除されます。
これらの控除や保険料は、個人の所得や扶養家族の状況、住所などによって異なるのが特徴です。所得税は収入が多いほど税額も高くなる累進課税方式に基づいて計算されます。
手取りが多くなるのは、専業主婦の妻や子供がいる家族です。反対に配偶者がフルタイムの共働きや子供がいない家族などは手取りが少なくなります。
例えば都市部で医師として働く40代男性の場合、年収が1,300万円だとすると手取りが900万円です。ただし、条件によって変わるためあくまで目安と考えておきましょう。
一方、開業医の場合は、売り上げた金額がすべて収入になるわけではありません。売り上げの中から税金や経費を差し引いた額が手取りとなります。
経費と認められるのは、人件費や設備費、消耗品などです。
上述したように研修医の年収は約470万円と低く、アルバイトをしながら稼いでいる20代医師も少なくありません。
求人サイトで見ると給与相場は、平均時給が12,000円前後、日給だと5万円から10万円でした。このことから、医師になるとかなり高額な金額でアルバイトができることがわかります。
医師不足からアルバイトやスポットなどの求人数は多いのが特徴です。
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医師の年収は、置かれている環境や地域、規模など多くの要因によって変動するのが特徴です。
医師の年収における都心と地方の違いは、地域の人口密度や医療機関の供給と需要、医師の状況などに影響を受けます。
都市部には多くの医療機関があり、多数の患者が診療を求めています。就職先での競争が激しくなりがちですが、患者が診察や治療を受ける機会も増え、インセンティブ制があれば高収入を得られることが多いです。
都市部の国立病院や専門クリニックでは、高度な専門知識や技術が求められます。そのため、診療科や手術の専門性を持つ医師は、高額の報酬を得られるでしょう。
一方、地方や僻地においては医師の不足が深刻であるため、医師の確保が難しいとされています。そのため、地方の公立病院やクリニックは医師に対して高額の報酬を提供し、医師の引き寄せを試みることがあります。
このことから、地方で働く医師の年収が都市部より高いケースがあるのです。さらに地方の医師はコミュニティの一員として信頼され、患者と良好な関係を築けることが多く、充実感ややりがいを感じる医師も多いでしょう。
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公的医療機関(国公立)と民間病院の違いについては経済的なことだけでなく、キャリアや環境などさまざまな要因が影響しています。
施設 | 公的医療機関(国公立) | 民間病院 |
メリット | 福利厚生が充実 先進医療機器を使用できる スキル向上が目指せる 社会的信用が非常に高い | 給与水準が高い 患者から信頼されやすい |
デメリット | 給与水準が低い 競争が激しい | 交通の便が悪い |
一般的には、民間病院の医師の年収のほうが公的医療機関より高い傾向にあります。これは民間病院が売り上げに応じて医師の報酬を支払うからです。
さらに、地域によって医師の需要と供給に差があります。都市部では民間病院や大学病院が多く、医師の求人が比較的豊富です。一方、地方や僻地では医師不足が問題となっており、高額の報酬が支払われることがあります。
公的医療機関は公的な予算によって運営しているため、給与水準が比較的低い傾向にあります。しかし、公的医療機関で働く医師は公務員としての待遇を受けるため、福利厚生が充実しているところはメリットといえるでしょう。
また、国公立病院や大学病院では、多様な症例に接する機会が豊富です。先進医療機器を使用し、最先端の診療技術を学べる環境が整っており、医師のスキル向上につながります。
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同じ医師でも診療科によって平均年収が異なります。それぞれランキング形式で見ていきましょう。
診療科 | 平均年収 | |
1位 | 脳神経外科 | 約1,480万円 |
2位 | 産科・婦人科 | 約1,466万円 |
3位 | 外科 | 約1,374万円 |
4位 | 麻酔科 | 約1,335万円 |
5位 | 整形外科 | 約1,289万円 |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 約1,267万円 |
7位 | 内科 | 約1,247万円 |
8位 | 神経科 | 約1,230万円 |
9位 | 小児科 | 約1,220万円 |
10位 | 救急科 | 約1,215万円 |
参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構|勤務医の就労実態と意識に関する調査
脳神経外科や産科などの外科医は手術を専門とするため、高度な技術と知識が必要です。手術には高いリスクが伴うことがあり、手術が成功した場合でも合併症が生じたり、患者からのクレームや訴訟が起きたりする可能性があります。
前述したように医師の年収にはかなりのバラつきがあり、もらっている額に納得がいっていなかったり、「医師は稼げない」とまで言われたりすることがあります。
医師が年収に不満を抱く主な理由として挙げられる、以下の2つについて詳しく見ていきましょう。
前述しましたが、医師には5年の研修期間があり、一人前の医師として働けるようになるまでには時間がかかります。研修医の間と研修期間が終わってすぐは、しばらく想定よりも収入が多くないことが不満の理由の一つです。
収入が多くないうえ、研修期間中は学会や勉強会などの費用も実費で支払わなければなりません。
そのため、医師のイメージとのギャップが生まれ、年収に納得がいかないということが起こります。
医師になるまでの努力や過酷な労働状況が、収入と釣り合っていないと感じるのも不満を感じる大きな理由です。
医師になるまでには高い学費と長い学生期間を費やさなければなりません。そして、前述したように研修期間中は満足な収入も得られず、勉強をする費用も必要になります。この時点で、労力と収入が釣り合っていないと感じてしまう人も少なくありません。
また、当直勤務やオンコール待機による長時間の労働も医師にとっての大きな負担となります。2025年4月から「医師の働き方改革」が開始されますが、医師の人手不足の助長や研究時間の減少など、早くも懸念点が上がっているのが現状です。
その他にも、所属する科や勤務先にもよりますが、月に数回の当直と休日でも緊急時は出勤しなければならないオンコール待機は大きなストレスとなるでしょう。オンコールストレス問題について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
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年収2,000万円以上を稼ぐ医師は、専門的なトレーニングと高度なスキル、長時間の勤務、コミュニケーション能力を備えており、需要の高い診療科で活躍していることが多いです。ここでは高収入を得ている医師の特徴を3つ解説します。
美容外科は一般的な外科よりも高収入が期待できる診療科の一つです。美容外科は美容整形手術や治療を専門とし、男女問わず人気があることから年々需要が高まっています。
美容外科医は高度な技術を持ち、美容に関する幅広い知識を習得しているため、高額の給与を得ることが可能です。
メディカルキャリアナビで掲載している美容外科医の求人では、年収3,000万円前後で募集しているクリニックが多く見受けられます。
また、美容外科医に転科するメリットは以下の通りです。
残業が少なく体力的にも楽インセンティブ制度がある技術や知識があればさらに年収をアップさせやすい将来はさらに需要が増える |
美容外科医の平均年収は約3,000万円です。(メディカルキャリアナビ調べ)医局で働くよりも高年収になりやすく、上記のようなメリットがあるので人気の高い職種と言えるでしょう。
また、近年は美容外科の需要が増加しており、女性だけではなく男性の美容への関心も高まっていることから、今後も美容外科医のニーズが拡大する可能性があります。これに伴い、待遇や給与面でも向上が期待されることでしょう。
美容外科医に興味のある方は以下をご覧ください。
>>美容外科へ転科するメリットは?美容皮膚科との違いや失敗しないコツを解説
>>美容外科に転職するメリット・デメリットとは?未経験でも美容外科医になれる?
当直や残業を増やすことは、医師にとって収入を増やす方法の一つです。当直や残業代が比較的高額であるため、短期間で収入をアップさせられます。主な手当は以下の通りです。
さらに、経験やスキルアップにもつながり、診療能力を向上させるチャンスになるでしょう。
ただし、医師の労働環境においては、長時間労働の是正やワークライフバランスの確保が求められており、長時間の当直や残業が難しいケースも増えています。
働き方改革の動きや法改正により、医療機関でも労働時間の制限が設けられつつあります。そのため、当直や残業にこだわらず、収入を増やす方法やキャリアアップの方法を検討することも大切です。
医師の年収を2.000万円以上にするには、単に専門的なスキルやキャリアだけでなく、コミュニケーション能力も非常に重要です。
医師は患者やその家族と密接に関わる職業です。そのため良好なコミュニケーション能力が診療の質を向上させ、患者の満足度を高められます。
また、医師は医療チームの一員として協力し、情報共有や協力体制の確立が重要です。医師同士や看護師、技術者などの医療スタッフとの円滑なコミュニケーションは、患者のために必要な医療を提供するうえで欠かせません。
チームとして協力し、効果的な医療ケアを提供することは、医療機関の利益向上にも貢献します。
医師としての働きに対して納得のいく収入を得るために年収アップを狙うのであれば、
これら5つの方法を検討してみましょう。
現在の職場で年収をアップさせたいのであれば、まずは直属の上司や職場に昇給についてかけ合ってみましょう。
昇給するために必要なスキルや目指すべき役職など、明確な目標を提示してくれるかもしれません。
あまり規模の大きくない職場の場合、昇給に関する明確なボーダーラインがないという可能性もあるので、その場合はある程度自分で条件を提示できるように準備しておくのがベターです。
正規雇用されている病院の他に、いくつか医師のアルバイトや非正規雇用で収入を補っているという医師も少なくありません。
医師のアルバイトで地番とされているのが、当直バイトや健診バイト。当直では1回3〜10万円程度、検診では1回3〜7万円程度の収入が得られます。
正規雇用されている方の病院勤務が終わった後や休日にシフトを入れることになるのでスケジュールはハードになりますが、シフトを入れた分だけの収入アップは確実です。
アルバイトをする医師は奨学金返済を早く済ませたいと考える人に多いですが、勤務する病院によっては副業が認められていないこともあるため注意しましょう。
勤務医ではなく、フリーランスの医師になることも、年収アップの選択肢です。
フリーランス医師とは、特定の医療機関に所属せず、複数の医療機関と契約して非常勤で働く医師のこと。時給1万円で1日8時間、週5日働いた場合のフリーランス医師の年収は1,920万円と、常勤医師に比べて550万円ほど高くなります。
勤務日数を多少減らしても常勤医師の収入と同程度になるため、労働と収入のバランス(ライフワークバランス)を見直したいという人におすすめの働き方です。
ある程度の経験がないと活躍するのはなかなか難しいですが、年収のアップだけでなく、私生活とのバランスも取りやすくなるのがメリットです。
フリーランス医師については、こちらの記事も併せてご覧ください。
また、医師のライフワークバランスについてまとめた記事もぜひこちらから目を通してみてくださいね。
年収アップを狙うために手っ取り早いのは、今より待遇のよい病院への転職です。転職をすることは待遇改善による年収アップだけでなく、さまざまな症例を経験することで医師としての実力アップにも繋がります。
転職先を探すポイントとしては、自分にとってマストである条件を事前に決めておくこと。昇給制度は整っているか、福利厚生はしっかりしているか、休みは取りやすいかなど、ある程度整理しておきましょう。
また、転職活動を行う際は医師専用の転職サイトを活用するのがおすすめ。以下の記事では数多くある医師転職サイトの中からおすすめのサイトをピックアップしてまとめているので、転職を考えている医師の方はぜひ参考にしてみてくださいね。
【2023年最新】医師転職サイトおすすめランキング!全20社を徹底比較
開業医として独立し、クリニックや病院を新しくはじめることも、大きく年収アップに繋がります。
厚生労働省「医療経済実態調査報告」による2021年のデータでは、勤務医の平均年収が1,467万円であるのに対して開業医の平均年収は2,689万円となっており、1,000万円以上も差があることがわかります。
自身が院長となるため、働く環境や条件、治療方針を自分の描くままにできることが大きなメリットですが、当然経営がうまくいかないと利益は出ません。地域のニーズに合わせ、患者の信頼を得られるだけのスキルや人間性も求められるため、簡単とは言えません。
開業するためにはかなりの準備資金が必要になり、事務作業や医師・看護師の採用などもしなければなりません。
簡単な道のりとは言えませんが、医師として開業することを目標としている人も少なくありません。年収アップ、そしてキャリアアップのために目指してみるのもいいかもしれません。
以上、医師の年収についてでした。平均年収やイメージと現実にギャップを感じた人も多いのではないでしょうか?
といったようなことがわかりましたね。
他の職業に比べて高収入だとしても、仕事内容に釣り合った収入でなければ納得いかないのはどの職業も同じです。この記事を参考に、医師の年収と仕事について見直すきっかけにしてみてくださいね。
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