当直の医師の仕事内容や基本的なスケジュールとは?
意外と知らない用語の定義や、常勤・非常勤の負担と手当の違いについて解説します。
記事の後半では、2024年4月に適用された働き方改革による影響や当直勤務時の快適な過ごし方などについても解説しますので、ぜひ今後の参考にしてください。
当直とは、夜間や休日など通常の勤務時間外に交代制で業務を担当することです。
医師以外にも消防士や介護職員など、医療や安全性の確保のために24時間365日の対応が必要な業界で用いられています。
当直の医師は、夜間や休日などの診療時間外に待機し、入院患者や外来患者の救急対応をおこなうのが主な仕事です。
当直は、休日の日中におこなう日直と、夜間に勤務先泊まりこみでおこなう宿直の2種類があります。
当直という言葉はこの日直と宿直を合わせた呼び方で、公的には宿日直といいます。
また、土曜日の診察終了から月曜日の朝までなど、日直と宿直をまたがって働くことを日当直といいます。
明確な定義はありませんが、実働に対して待機時間が長く、比較的夜間にしっかり睡眠がとれる宿直のことを寝当直と呼ぶことがあります。
例えば、療養型病院や病床の小規模病院など、外来対応がなく、入院患者の急変の可能性が低い施設の宿直がこれに該当します。
同じ当直でも、常勤の医師にとっての当直と、非常勤(アルバイト)にとっての当直は負担や手当が異なります。
常勤の医師は当直明けに通常勤務に入ることも多く、ときにはそのまま手術をしなければならないこともあります。
このため常勤の医師にとっては、当直の体力的や精神的な負担はかなり重いといえます。
こういった事情から、当直を非常勤(アルバイト)に外部委託するのが、いわゆる当直バイトと呼ばれる求人です。
非常勤(アルバイト)の当直医は、希望するタイミングで働ける、勤務頻度を調整できる、仕事内容(求人)を選べるなどの点から、常勤の医師よりも体力的・精神的な負担は少ないといえます。
常勤の医師と当直と、非常勤(アルバイト)の医師がおこなう当直バイトは、手当にも違いがあります。
常勤の医師の当直の手当は1回あたり15,000円~20,000円程度です。
しかし、当直を外部委託する場合はある程度応募が集まらないと必要な人員を確保できないため、非常勤(アルバイト)の医師の場合は、寝当直でも3,0000円前後と高めの報酬が設定されることが多くなっています。
>>非常勤医師として働くメリット・デメリットとは?常勤医師との違いも解説
それでは、当直の医師は宿直や日直などの当直の間、一体どんな仕事をして、どんな風に過ごしているのでしょうか。
当直の医師の業務内容や、基本的なスケジュール例をご紹介します。
当直の医師の主な仕事は、入院患者・外来患者の対応です。
外来患者の対応では、主にウォークイン患者や救急車で搬送されてきた患者などの救急対応をおこないます。
また、入院患者に対しては、主に回診や必要な処置・処方がある場合の対応をおこないます。
次に、基本的な当直の医師のスケジュール例を紹介します。
以下は、総合病院の勤務医の宿直の一例です。
18:00~ | 宿直開始、引き継ぎ |
18:30~ | 回診 |
19:00~ | カルテや検査結果の確認、カンファレンス |
21:00~ | 消灯、食事 |
23:00~ | 夜間巡回入院患者の急変や呼び出し、急患があれば対応 |
4:00~ | 仮眠 |
8:00~ | 朝食、申し送り |
8:30~ | 日勤開始 |
このように常勤の医師の場合は、当直明けにそのまま通常勤務に入るケースも珍しくありません。
厚生労働省の研究結果をもとに医政局が集計した「令和元年 医師の勤務実態調査」には、宿直をしている医師の割合とその頻度についてのデータが掲載されています。
同資料によると、常勤の病院勤務医の月当たりの宿直回数は以下の円グラフのとおりです。
データ引用;令和元年 医師の勤務実態調査―医政局医事 p19
1ヶ月あたりの当直回数は、0回と1~4回の医師が43%と同率で最も多くの割合を占めています。
次いで当直回数5〜8回が12%、9回以上が2%という結果になっています。
当直の頻度は勤務先や診療科目によっても異なります。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」に掲載されている、診療科目ごとの日直・宿直の月当たりの平均回数のデータは以下のとおりです。
<日直>
診療科目 | なし | 1〜2回 | 3〜4回 | 5回以上 | 日直ありの合計 |
内科 | 38.9 | 50.3 | 5.8 | 4,9 | 61.0 |
外科 | 37.0 | 53.8. | 5,0 | 4,3 | 63.1 |
整形外科 | 38.1 | 55.2 | 3.8 | 2.7 | 61.7 |
脳神経外科 | 38.2 | 52.8 | 5.7 | 3.2 | 61.7 |
小児科 | 26.3 | 58.0 | 11.2 | 4.4 | 73.6 |
産科・婦人科 | 30.6 | 44.9 | 16.3 | 8.2 | 69.4 |
呼吸器科・消化器科・循環器外科 | 30.0 | 61.1 | 5.4 | 3.5 | 70.0 |
精神科 | 31.2 | 53.1 | 8.8 | 6.9 | 68.8 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 47.8 | 47.6 | 2.8 | 1.8 | 52.2 |
救急科 | 8.3 | 41.7 | 16.7 | 33.4 | 91.8 |
麻酔科 | 46.4 | 36.6 | 8.5 | 8.5 | 53.6 |
放射線科 | 60.5 | 36.0 | 1.8 | 1.8 | 39.6 |
その他 | 51,6 | 41.1 | 5.6 | 1.6 | 48.3 |
合計平均 | 38.2 | 51.0 | 6.3 | 4,5 | 61.8 |
「日直あり」(日直回数月 1 回以上の合計)の割合がもっとも高いのは、救急科で(91.8%)。
次いで小児科(73.6%)、呼吸器科・消化器科・循環器科(70.0%)、産科・婦人科(69.4%)などが日直のある診療科となっています。
また、月5 回以上の割合が多い診療科としては、救急科(33.4%)、麻酔科(8.5%)、産科・婦人科(8.2%)などが挙げられます。
反対に、日直が少ない(なし)の診療科は、上から順に放射線科(60.5%)、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科(47.8%)、麻酔科(46.4%)となっています。
<宿直>
診療科目 | なし | 1〜2回 | 3〜4回 | 5回以上 | 日直ありの合計 |
内科 | 33.3 | 33.3 | 23.6 | 9.7 | 66.6 |
外科 | 26.3 | 39.5 | 24.0 | 10.4 | 73.9 |
整形外科 | 31.1 | 42.0 | 22.0 | 4.9 | 68.9 |
脳神経外科 | 22.0 | 42.3 | 26.0 | 9.7 | 78.0 |
小児科 | 28.3 | 20.5 | 30.2 | 21.0 | 71.7 |
産科・婦人科 | 29.9 | 21.1 | 21.1 | 27.8 | 70.0 |
呼吸器科・消化器科・循環器外科 | 26.0 | 48.0 | 19.6 | 6.5 | 74.1 |
精神科 | 25.0 | 25.4 | 29.6 | 20.0 | 75.0 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 41.2 | 42.5 | 14.6 | 1.8 | 58.9 |
救急科 | 5.6 | 11.1 | 19.4 | 63,9 | 94.4 |
麻酔科 | 43.1 | 22.9 | 18.3 | 15.7 | 56.9 |
放射線科 | 59.6 | 30.7 | 8.8 | 0.9 | 40.4 |
その他 | 50.0 | 27.4 | 13.7 | 8.8 | 49.9 |
合計平均 | 32,6 | 34.8 | 21.8 | 10.8 | 67.4 |
データ引用:「勤務医の就労実態と意識に関する調査」-独立行政法人 労働政策研究・研修機構p37
「宿直あり」(宿直回数月 1 回以上の合計)の割合がもっとも高いのも、日直と同様、救急科(94.4%)という結果でした。
ただし、2番目は脳神経外科(78.0%)、3番目は精神科(75.0%)、4番目は呼吸器科・消化器科・循環器科(74.1%)となっており、1位以降の順位は日直に比べて変動が見られます。
また、月5 回以上の割合が多い診療科についても、最も多いのは救急科(63.9%)と変わりませんが、2番目は産科・婦人科(27.8%)、3番目が小児科(21.0%)となっており、日直とやや異なる結果となっています。
宿直が少ない(なし)の診療科は、上から順に放射線科(59.6%)、麻酔科(43.1%)、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科(41.2%)と、日直とほぼ変わらない順位です。
このように休日や夜間に病院で働くことになる当直や、入院患者の急変や急患にそなえて自宅などで待機するオンコールは、医師のワークライフバランスを左右する大きな要素でもあります。
実際、当直やオンコールにより労働時間や拘束時間が増えるとじゅうぶんな休息がとれず、体力的・精神的な負担が重くなるため、それが理由で転職を検討する医師も少なくありません。
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2019年から、順次施行されている政府による働き方改革。
医師は業務の特殊性から、5年の猶予期間を経て2024年4月にすべての医師に適用が開始しました。
医師の働き方改革では「医師の時間外労働に上限を設けることで、医師の長時間労働を改善しよう」というのが、その取り組みの大枠です。
具体的には、労働基準監督署長から宿日直許可を得ていない医療機関に、医師の労働時間・連続勤務時間に上限規制が設けられました。
従来、当直勤務は労働基準法上の労働時間規制の適用対象外であり、週40時間の法定労働時間に含まれませんでした。
しかし、働き方改革後は、宿日直許可を得ていない医療機関で当直勤務をすると、たとえ実働がほぼない寝当直の場合でも労働時間としてカウント。
当直の時間を労働時間に含めることで、時間外労働を含む長時間労働を規制するほか、連続勤務に関する規制が設けられました。
参照:断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時 間等に関する規定の適用除外許可申請について-厚生労働省
医師の働き方改革で一つ大きく変わるのが、医師の当直明けの過ごし方です。
従来では、常勤の医師が当直明けにそのまま通常勤務に入ることも珍しくありませんでした。
しかし、働き方改革の適用後は、宿日直許可がない医療機関では当直明けにそのまま通常勤務することはできなくなります。
働き方改革により、宿日直許可を得ていない医療機関では、時間外労働時間が月の上限を超える医師の連続勤務時間が28時間に限定されるためです。
28時間=丸1日と4時間ですから、朝8時に出勤しその日が当直だった場合、働けるのは最長翌日の12時までとなり、それ以降は原則として勤務できません。
医師の働き方改革は、非常勤(アルバイト)の当直にも大きな変化をもたらします。
まず、働き方改革適用後は医師の時間外労働時間に上限が設けられるため、病院によっては常勤の医師だけで当直をまわすのは難しくなります。
このため今後、当直バイトの求人案件は増える可能性が高いといえるでしょう。
また、医師の時間外労働時間に上限が設けられるということは、当直バイトに希望する回数入れなくなる可能性があるということでもあります。
ただし、宿日直許可を得ている医療機関であれば、当直勤務の間の診療時間のみが労働時間としてカウントされます。
このため当直バイトを考えている医師は、バイト先の医療機関が宿日直許可を得ているか、応募する前に確認しておくとよいでしょう。
>>働き方改革で医師の労働環境が変わる!
同じ当直でも、その忙しさや肉体的・精神的な負担は、診療科や勤務先、医師の雇用形態によって異なります。
しかし、一般的にいわれる「当直がきつい」というイメージは、常勤の医師の立場を想定したものです。
前述したように、常勤の医師は当直明けの勤務にすることもあるため、肉体的・精神的負担が重いです。
それに対して、非常勤(アルバイト)の場合は働くタイミングや仕事内容を選べます。このためいわゆる寝当直と呼ばれるような求人に応募すればコスパよく稼ぐことも可能な方法だといえるでしょう。
>>未経験OKの医師向けAGAバイトとは?仕事内容と人気の理由を紹介
>>美容皮膚科のアルバイトは何をする?仕事内容や収入、働く注意点を解説
>>【医師向け】脱毛バイトがいま狙い目?未経験でもできる人気のアルバイトを紹介
当直を快適に過ごすには、快適な睡眠の確保と待機時間の有効活用が重要です。
とくに「当直明けの勤務に備えて少しでも疲れをとりたい」という方は、枕やマットレスなどお気に入りの寝具を持参することで、疲労を回復しやすくなるでしょう。
洗面用具や歯ブラシセットなどの衛生用品も、眠気覚ましやリフレッシュに役立ちます。
反対に、「ほとんど緊急対応がないため、待機時間を有効に活用したい」という方は、学会の準備や資料作りなど、業務関連や自分の勉強を進めると充実した時間を過ごせます。
携帯やパソコンの充電器のほか、自分の足に合ったスリッパやポータブル加湿器など、当直室で快適に過ごすためのグッズを必要に応じて持参するとよいでしょう。
当直の医師は、夜間や休日に入院患者や外来の急患に対応するのが主な仕事です。
当直の体力的・精神的な負担は、診療科目や実際の勤務先、医師の勤務形態によっても異なります。
一般的に、常勤の医師は当直明けに通常勤務に入ることも多いため負担が重くなりますが、それは2024年4月に適用された働き方改革により軽減されるのが期待されているとことです。
一方、非常勤の場合は、働き方改革の影響により、当直バイトで思うように稼げなくなる可能性があります。
ポイントは、勤務先が宿日直許可を得ているかどうかです。
宿日直許可を得ていない場合は、待機時間を含めて当直の勤務時間がまるまる労働時間としてカウントされますが、宿日直許可を得ている場合は診療時間のみが労働時間としてカウントされます。
このためなるべく多く当直バイトに入って稼ぎたいという方は、宿日直勤務の許可を得ている求人に応募するとよいでしょう。
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