医師がワークライフバランスを保つには?現状や課題、できることは

ワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和を意味し、仕事と生活の両方を充実させる働き方や生き方」を指します。

“生涯現役”として働くことも可能な医師ですが、過酷な労働によってワークライフバランスが保てていないと負担が大きく、長く仕事を続けていくことが難しくなってしまいます。

今回この記事では、医師のワークライフバランス事情は現状どうなっているのか、どのような課題があるのか、そして、ワークライフバランスを整えていくにはどうすればいいかについてまとめました。

医師の働き方について見直すキッカケとして、ぜひ参考にしてみてくださいね。

医師の労働時間の現状

患者の健康や命が最優先である医師にとって、緊急の手術や入院、オンコールや当直によって拘束時間が増えたりと規定の労働時間が長引いたりすることはめずらしくありません。

一般企業では労働環境を改善するため、残業時間の見直しや特別休暇の推奨が行われている中、医療業界ではまだまだ労働環境に対する配慮が行き届いていないのが現実。

プライベートや家庭の時間などと仕事のバランス、いわゆる“ワークライフバランス”が取りづらくなっているのが大きな課題です。

医師の時間外労働

厚生労働省がまとめた「医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究」では、医師の時間外労働の実態が示されています。

「自分の時間外労働の時間のおおよその数字がわかる」と答えた医師は、設問に答えた医師のうちのおおよそ80パーセント程度です。

この中で、「時間外労働はゼロである」と答えた層は、わずか1割程度しかいません。もっとも多いのは、「20時間~50時間」であり、3人に1人がこれくらいのは時間外労働をしている、としています。月の時間外労働が80時間を超えると答えた医師も8パーセント程度います。

時間外労働の主な理由

「医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究」

なお、時間外労働が生じるもっとも大きな要因は「緊急対応」で、これが65パーセント近くに上ります。

また、「手術や外来対応が長引いた」「報告書などの書類の作成が長引いた」と答えた層も、50パーセントを超えています。

ちなみに、「時間外労働をストレートには申告していない」という人は52パーセント程度。つまり、「時間外労働をそのまま申告している」と答えた層が半数以下も存在するのです。

また、「時間外労働の報告に対して、そのまま満額、制限なしで給与が支払われている」「タイムカードの通りに支払われている」と答えた層は、合わせても全体の40パーセント程度にすぎないことからも、医師の残業や給与には不満が出やすい状況であることがわかります。

一番忙しい科は?

医師専用サイトメドピアが、会員の医師を対象としてとったアンケートがあります。その内容は、「どの科が一番忙しいか?」というものです。

このアンケート結果で1位になったのは「どの科でも忙しい」でしたが、次いで以下の診療科の回答が多くなりました。

  • 産婦人科医
  • 外科医
  • 救急科医
  • 小児科医
  • 脳神経外科医

これらの診療科は、緊急対応が多く、昼夜問わず業務が発生する可能性が高いです。そのため、オンコールや当直などの頻度も多くなり、身体的にも精神的にも忙しい科だと言えます。

しかし、ランキングの結果と以下のような口コミを見ると、自身の技量や環境によっても忙しさは大きく変わってきそうです。

どの科もそれぞれの大変さがあるから、一概には言えないと思う。その人によって、何がきついかの基準も違うでしょう。(40代、脳神経外科)

病院にもよると思います。人手がないところはどの科でもきついのではないでしょうか。(30代、小児科)

このため、ワークライフバランスを見直す医師の方は、診療科と医局の選択は慎重に行ったほうが良いでしょう。

出産や子育ても医師のワークライフバランスの課題に

女性医師がワークライフバランスについて悩む大きなポイントの一つに、出産や子育てがあります。

スケジュールが定まらず、多忙を極める医師の仕事は体の負担にもなるため、妊活中や妊娠中にはなかなかハードに。かといって、休職や退職をすると人手不足になってしまうなど、職場のことを優先してしまう女性医師が多いのです。

また、休職や退職ができた場合でも、その後の職場復帰が難しくなることも。

医師としてキャリアを重ねながら、出産や子育てと両立させていくのが簡単ではない現状が、女性医師のワークライフバランスの課題となっています。

近年は女性だけでなく男性も育児に積極的に参加する家庭が増えています。育児を理由に休みを取りづらいのは、性別に関係なく課題と考えるべきでしょう。

>>【女医必見】柔軟な勤務時間と高収入でワークライフバランスを実現

ワークライフバランスは現状と理想を整理して考えよう

医師としてのワークライフバランスを見つめ直すには、現状と理想を整理して考えるのがポイントとなってきます。

まずは直近1週間、余裕があれば1か月の職場での様子や普段の生活を見直してみてください。

・朝起きる時間
・通勤時間
・病院内での業務内容
・休憩できている時間
・帰宅する時間
・プライベートの時間
・人間関係

など、細かいところまで書き出すのがポイントです。

こうすることで

「勤務時間が長い」
「科の人間関係が辛い」
「家族との時間が少ない」
「今の働き方に対して報酬が見合っていない」

といったような負担や改善したい点が見えてきます。

また、最も理想とし譲れないことと、そのために許容できるものに分けて考えることもポイント。

「勤務時間が短くなることが最優先で、報酬は多少低くなってもいい」「将来に向けてキャリアを積んでいくため、プライベートは多少減ってもいい」など、具体的にイメージしてみましょう。

医師のワークライフバランスを整えるためにできること

医師としてのワークライフバランスを整えるためには、どのようなことができるのでしょうか。

具体的なアクションとしては、

・上司や職場へ働きかける
・働く科を変える
・非常勤・アルバイトなどへ雇用を変える
・転職を視野に入れる
・病院勤務以外も選択肢に入れてみよう
・独立する

といったものがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

上司や職場へ働きかける


最初に行動できる身近なところといえば、上司や職場に直接改善を働きかけることです。

「残業が多く負担なので勤務時間を調整してほしい」
「昇給を目指したいので、必要な条件を提示してほしい」
などを提案してみましょう。

人間関係や職場までのアクセスなど、環境を変えずに改善を求める場合に向いている方法です。

ただ、相談したからといって必ず解決するとは限りません。1人で働きかけるより、同じ不満や不安を持った同僚などと問題の解決にあたってみるのも、遠回りながら近道になることもあります。

働く科を変える

不満や不安を感じる環境を変えるために、働く科を変えることも一つの手。

病院では科によって業務の進め方やコミュニケーションの取り方、報酬などが大きく変わります。科を変えることで、今抱えている問題が解決できるかもしれません。

今の科でやりがいを感じられない場合やキャリアアップのイメージが見えない場合も、転科することを視野に入れてみるといいでしょう。

ただし、転科先の知識やスキルを新たに一から学び直さなければならないため、プライベートな時間は転科前よりも減ってしまうかもしれません。

>>美容外科へ転科するメリットは?美容皮膚科との違いや失敗しないコツを解説

>>美容外科に転職するメリット・デメリットとは?未経験でも美容外科医になれる?

非常勤・アルバイトなどへ雇用を変える


当直やオンコール、残業などをできるだけなくして、長時間勤務による負担を軽減したい場合は、雇用形態を非常勤・アルバイトなどに変えてフリーランス医師として活躍する手もあります。

非常勤やアルバイトでは、時間外労働はほとんどなく、当直やオンコールも希望すればなしにすることが可能。

プライベートの時間を確保しやすく、家庭や出産・育児とのバランスもとりやすくなります。

ただし、常勤医師が足りない間の穴埋めとして雇われるケースが多いので、医師の数が間に合った場合には出勤を断られたり契約を切られたりする可能性も。雇用が安定しないという点はデメリットになることも理解しておきましょう。

フリーランス医師については以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひ目を通してみてくださいね。
フリーランス医師と常勤医師の違い|メリット・デメリット、年収について

>>未経験OKの医師向けAGAバイトとは?仕事内容と人気の理由を紹介

>>美容皮膚科のアルバイトは何をする?仕事内容や収入、働く注意点を解説

>>【医師向け】脱毛バイトがいま狙い目?未経験でもできる人気のアルバイトを紹介

転職を視野に入れる


現在の職場でワークライフバランスを取るのが難しいと感じた場合は、思い切って条件の良い職場に転職することを視野に入れてみるのもいいかもしれません。

多くの患者と症例を経験し、医師としての実力をどんどん伸ばしていくために転職する医師もめずらしくありません。

転職先を探すときには、

・残業はどのくらいあるのか
・昇給制度は整っているか
・現在働いている医師は実際どのくらい休めているのか
・どのような症例が多い病院なのか

など、自分の中で重要なポイントに重きを置いてリサーチしましょう。

病院勤務以外も選択肢に入れてみよう

医師が活躍できる職場は、病院だけではなく、次のような職業もあります。

職種仕事内容
産業医企業に務める労働者の健康を管理します。作業環境の管理や維持、健康指導などを行います。
公衆衛生医師保健所や本庁で地域や自治体の健康に携わります。食品衛生や感染症、乳幼児健診などの母子健康事業、特定健診などを行います。
メディカルドクター製薬会社で新薬の開発にあたります。ドクターの立場から医学的根拠に基づいたアドバイスや提案を行います。
記事監修WEBメディアや医療本などに掲載された内容が医学的根拠に基づいているかどうかを確認します。
起業医師IT業界やファイナンス業界などで、医師の経験と知識を活かして起業します。
老健施設介護老人保健施設で、要介護者の健康を管理します。看護師などへの指示出し、定期的な健康診断、主治医意見書の作成などを行います。
保険会社保険加入者の健康状態を調査する、保険金支払いの妥当性や正確性を判断するなどを行います。
オンライン診療WEBサイトやアプリなどを介してオンラインで患者を診察します。

これらの仕事は、患者の命や健康に関わる急な診察や手術が入ることがないため、勤務スケジュールが比較的安定し、時間を確保するという意味でのワークライフバランスが取りやすくなります。

ただし、病院勤務の医師に比べて収入が低くなったり、仕事の数が安定しなかったりというデメリットもあるので、自身の目指すワークライフバランスに合った職種を探してみましょう。

独立する

医師として独立し、クリニックや病院を開業すれば、営業時間や休日などが全て自分で決められるという点ではワークライフバランスをとりやすくなるでしょう。

厚生労働省「医療経済実態調査報告」による2017年のデータでは、勤務医の平均年収が1,488万円であるのに対して開業医の平均年収は2,748万円と、収入の大幅なアップも期待できます。

ただし、開業するまでにはさまざまな準備が必要で、その際にかかる費用や時間は膨大です。また、経営がうまくいかなくなるリスクも抱えることになるため、慎重に判断する必要があるでしょう。

まとめ

以上、医師のワークライフバランスについてでした。

理想のワークライフバランスを取りながら働けている医師はあまり多くないのが現状です。これから先の働き方改革で、医師の労働環境や条件も見直すべきであることは日本の課題の一つでしょう。

ただ、国としてのサポートが少ない中でも、自身と向き合い、行動に移していくことで、理想のワークライフバランスに近づくことができます。

今の自分にできることを少しずつでも取り組んでみてはいかがでしょうか。

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