医師が転職を考える時、常勤医師としての働き方に加えて、非常勤医師としての働き方を選べます。
しかし、これまで常勤医師として働いてきた方だと、非常勤医師ならではのメリットやデメリットが分からず、なかなか転職へ踏み出せないのではないでしょうか?
そこで今回は、非常勤医師ならではのメリットやデメリットを解説していきます。常勤医師との違いもまとめているので、「常勤から非常勤へ転職しようかな?」とお考えの医師の方は、ぜひご覧ください。
医師の場合、常勤と非常勤のボーダーラインは最低勤務時間です。「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」(医療法)により規定されています。
具体的には、週32時間以上勤務した医師が常勤医師、週32時間未満の勤務時間の医師が非常勤医師と定義されます。
病院で定めた医師の 1週間の勤務時間が、 32時間未満の場合は、 32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。
引用元:医療法第 25条第 1項の規定に基づく立入検査要綱の一部改正について
ただし、この32時間ルールは絶対ではありません。医療機関によっては、32時間ではない独自のボーダーラインで、常勤医師と非常勤医師を分けている場合があります。
ここからは、常勤医師と非常勤医師の違いについて以下の内容を比較していきます。
・働き方
・業務内容
・待遇
・医療機関との関係
・求められるスキル
・保険や税金の手続き
常勤医師と非常勤医師は「働き方」に大きな違いがあります。
常勤医師は勤務時間の都合上、基本的には1カ所の医療機関にのみ勤務し、そこでの仕事に注力することが多いです。
しかし、非常勤医師は常勤医師よりも勤務時間が短いことから、複数の医療機関での仕事を掛け持ちしやすくなっています。常勤医師に比べて、より自由な働き方が可能です。
また、空いた時間を医師としての仕事にあてるのではなく、家事や子育て、趣味に費やすこともできます。
非常勤医師は、常勤医師より「業務内容」が限定されるという違いもあります。
非常勤医師にもっとも多い仕事は外来対応です。外来以外では、当直や訪問医療も、非常勤医師に任されやすい仕事と言えます。
一方で、患者さんの執刀(手術)などを任されることは基本的にありません。これは、勤務時間が限られる非常勤医師では、手術を担当した患者さんの術後管理を徹底することが難しいという問題があるためです。
ただし、日帰りで行われる眼科の手術や美容外科、美容皮膚科の手術であれば、非常勤医師が執刀を担当するケースもあります。
一般的に、給与面の待遇は非常勤よりも常勤のほうが良い傾向にあります。しかし医師に限って言えば、非常勤のほうが常勤よりも高収入を得られます。非常勤医師は、単純な時給面の待遇がとても優遇されているためです。
ただし条件次第では、勤務時間によって給与が変わる時給での支払いであること、保険や年金を自分で支払わなければならないことなどから、安定性は常勤医師に一歩劣ります。
非常勤医師のみで常勤医師の収入を超えたいと考えるならば、相応の工夫や努力が必要です。
常勤医師と非常勤医師では、医療機関との関係にも違いが現れます。
基本的に、常勤医は医療機関の関係者と長く関わることになるため、その関係性も徐々に深いものになっていきます。
一方で非常勤医師と医療機関の関係者は、必要最低限のビジネスライクな関係になりやすいです。あっさりとした人間関係ですが、突然の当直や時間外勤務を頼まれにくいというメリットもあります。
人に頼られる医師になりたい場合は物足りないかもしれませんが、ライフワークバランスを重視するのであれば、こうしたビジネスライクな人間関係は居心地が良いと感じるはずです。
非常勤医師は、常勤医師に比べて即戦力としてのスキルを求められる傾向にあります。採用の募集条件に関しても、一定以上の臨床経験を積んでいること、研修を行わなくても診療を行えることなどが条件として設定されているケースが大半です。一方で常勤医師は、現在のスキルよりも将来のポテンシャルが重視される傾向にあります。
以上のような違いから、未経験の医師や経験年数が短い医師は、非常勤医師として働きたくても応募できる募集が限られてきます。美容皮膚科や在宅診療は比較的未経験でも応募できることが多いため、まずはこうした募集を探し、応募するところから始めることになるでしょう。
「待遇」の項目で軽く触れた通り、非常勤医師は常勤医師と違い、条件次第では社会保険や厚生年金に入れず、自分自身で国民健康保険、厚生年金に加入しなければなりません。具体的には、勤務時間が常勤医師の4分の3未満の非常勤医師は、自身で保険、年金に加入することになります。
この場合、当然ですが加入の手続きも自ら行う必要があります。加えて確定申告の手続きも必要です。
常勤医師であれば免除されるこれらの手続きを、非常勤医師は自分で行わなければならず、慣れるまでは負担になることでしょう。
ここまで、常勤医師と非常勤医師の違いを解説してきましたが、非常勤医師にも2種類の働き方があり、働き方によっても仕事内容や待遇が変わります。
そこで、続いては非常勤医師の2種類の働き方を紹介します。
定期非常勤は、勤務日が決まっていて、かつ同じ条件・環境で継続的に働く働き方です。
定期非常勤のメリットは、一度仕事が決まればある程度の安定した収入を得られるところです。週に⚪︎日、毎週⚪︎曜日の勤務と決まっているので、その分は収入が担保されます。
常勤医師のように週5日、フルタイムで働く必要がないので、子育てや趣味などのプライベートと仕事を両立したい人に向いています。
スポットは、特定の日時にのみ勤務する働き方です。定期非常勤と違い、同じ条件。環境で継続して働くことはなく、あくまで突発的に業務に従事する形となります。
例えば健康診断やワクチン摂取などで、一時的に多くの医師の確保が必要になった場合に、こうしたスポットの募集が出されます。
定期非常勤のような安定性はありませんが、時給が比較的高めなので、短期間で稼ぎたい時に向いています。
それでも、スポットを選択して働く非常勤医師はあまり多くなく、大半の人は定期非常勤を選んで働いています。
>>医師(医者)が非常勤でバイトするのはなぜ?複数の勤務先で働く理由とメリット・デメリット
ここまで、常勤医師と非常勤医師の違いについて見てきました。
ここからは、より非常勤医師にフォーカスした話として、非常勤医師として働くメリット・デメリットを解説します。
まずは、非常勤医師として働くメリットをまとめました。非常勤医師として働くメリットは、大きく次の5つがあります。
メリットの中でもっとも大きく、よく挙げられるのが「ワークライフバランスのとりやすさ」です。
医師はその仕事内容から、どうしても仕事が忙しくなりがちです。自分の時間や家族との時間を、なかなか作れないという方も多くいます。
その点、非常勤医師は余裕を持って働きやすいので、自分の時間や家族との時間を大切にしたい方に向いています。
例えば週に1回は趣味の活動に専念する、午後3時までの勤務にして残り時間を家事と育児に費やすなどの働き方が可能です。
勤務医にとって、もっとも非効率と言われているオンコールが、非常勤医師には基本的にありません。
また、常勤医師の場合、オンコールは勤務時間にカウントされないという問題がありますが、非常勤医師であれば、万が一夜勤などでオンコールに対応した場合も、勤務時間としてカウントされるのがメリットです。
非常勤というとキャリア面に不安を持つ方がいると思いますが、複数の職場を掛け持ちしやすい非常勤医師は、働き方次第では、常勤医師に比べて多様な現場を経験できるというメリットがあります。
多くの現場を経験するほど知識やノウハウが増え、キャリアアップに繋がりますし、人脈を広げることも可能です。
>>未経験OKの医師向けAGAバイトとは?仕事内容と人気の理由を紹介
>>美容皮膚科のアルバイトは何をする?仕事内容や収入、働く注意点を解説
>>【医師向け】脱毛バイトがいま狙い目?未経験でもできる人気のアルバイトを紹介
人間関係によるストレスは、医師の転職理由の上位を占めるほど、多くの人を悩ませています。
その点、非常勤医師は常勤医師よりも勤務時間が短く、職場の人と関わる機会が少ないため、人間関係のストレスを感じにくいです。
人間関係に悩まされることなく、自分の仕事に専念できるという点で、大きなメリットと言えるでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、非常勤医師は常勤医師よりも、多くの収入を得られる場合があります。
なぜなら、勤務時間や給料の制限がある常勤医師と違い、「稼ぎたい」と思えば報酬額の高いところで働いたり、勤務先を増やしたりなどの工夫ができるためです。
常勤医師以上に稼ぎたいと思ったなら、相応の努力は必要になりますが、非常勤医師だからといって収入面が厳しいケースばかりではないことを覚えておきましょう。
続いては、非常勤医師として働くデメリットをまとめていきます。
メリットと併せてチェックし、今後の参考にしてください。
非常勤医師として働くメリットの項目で、「常勤医師より多くの収入を得られる場合がある」とお話ししましたが、それは相応の努力をした人にのみ当てはまります。
基本的に非常勤医師は、常勤医師に比べて収入が少ないものと覚悟をしておきましょう。
収入が少ないだけではなく、安定しないのもデメリットの1つと言えます。
シフトの関係で勤務日数が少ない月がある、突然契約が終了してしまう可能性があるなどの理由から、前月よりも収入が減ることもあり得ます。
非常勤医師だと、勤務時間が短い場合に勤務先で社会保険に加入できません。
この場合、国民健康保険に加入し、自分で保険料を払う必要があります。
支払いの手間が発生するのはもちろん、社会保険のように勤務先が負担してくれるわけではなく、全額自費で支払うので、金銭的な負担も大きく感じるでしょう。
社会保険に加入できないことに加え、手当や福利厚生のような優遇も基本的にありません。
常勤医師であれば学会への参加費や医学書の購入、交通費などの雑費に補助を受けられますが、非常勤医師はすべて自分で負担します。
退職金などももらえないので、仕事におけるお金のやりくりに苦労する可能性があります。
ここまで、常勤医師と非常勤医師の違い、そして非常勤医師として働くメリット・デメリットを解説してきました。
その上で、「結局は常勤医師と非常勤医師、どちらで働くべき?」と疑問に感じた方も多いでしょう。
結論からお伝えすると、「自分に合った勤務形態を選択する」ことが大切です。
例えば安定して収入を得たいのであれば常勤医師が向いていますし、ワークライフバランスを取りながら働きたいのであれば非常勤医師が向いています。
常勤医師、非常勤医師は、どちらも異なるメリット・デメリットがあります。「どちらが良いか」ではなく、「どちらが自分に合っているか」という観点で考えてみると、選ぶべき道が見えてくるはずです。
ここでは、非常勤医師が向いている人の特徴と、向いていない人の特徴をまとめていきます。
前述の通り、常勤か非常勤かの選択は「どちらが自分に合っているか」という観点で考えたうえで、「自分に合った勤務形態を選択する」ことが大切です。
以下の内容を参考に、自分に非常勤医師が向いているのか、それとも向いていない(常勤医師が向いている)のかを判断してください。
非常勤医師が向いている人の特徴 | 非常勤医師が向いていない人の特徴 (常勤医師が向いている人) |
・ライフワークバランスを重視する ・家庭や趣味を優先したい ・雑用や事務処理が得意 ・人と深く関わることが苦手 ・自分なりに努力して成長したい | ・安定して働きたい ・仕事に打ち込める環境が整っている ・雑用や事務処理が苦手 ・患者に深く寄り添った仕事がしたい ・同僚とともにスキルアップしていきたい |
以上の表を見ると分かるように、非常勤医師は自由度が高く、プライベートを優先して働ける勤務形態です。また、勤務先次第ではありますが常勤医師ほど難しく複雑な仕事を任せられることもなく、雑用や事務処理など、他人が代われるような仕事がメインになります。
このため、家庭や趣味があって、かつ仕事と同じくらいもしくはそれ以上に大切にしたいという人に、非常勤医師は向いています。
一方で非常勤医師は、常勤医師に比べると安定性に欠ける勤務形態です。日給や時給の場合は休みが多いほど収入に影響し、勤務日数によっては保険や年金も自分自身で支払わなければなりません。また、雑用や事務処理が多いことから患者と接する機会も限られているので、「患者さんに頼られる医師になりたい」などの夢を持っている人には向いていません。
「非常勤医師が向いている人と向いていない人」を参考に、それでも非常勤医師になりたい、非常勤医師が向いていると判断したならば、次は仕事探しをすることになります。
非常勤医師の仕事を探す方法には以下の2つがあります。
・転職サイトやコンサルタントを利用する
・知人に紹介してもらう
このうち、おすすめは「転職サイトやコンサルタントを利用する」方法です。特に医師の転職に特化したサイトなら、厳選された好条件の求人情報から、自分の希望にぴったりマッチする非常勤医師の求人を見つけることができます。
知人に紹介してもらう場合は、本当に信頼できる相手に頼みましょう。紹介された職場に問題があり、転職してから後悔したというケースも少なくありません。
また、知人から紹介された転職先だと、万が一合わなくても辞めづらいというデメリットが
あることも覚えておきましょう。
非常勤医師の仕事を探すのに転職サイトを使う場合は、「メディカルキャリアナビ」の利用がおすすめです。メディカルキャリアナビは医療コンサルティング会社が提供する転職サイトであり、独自の非公開求人を数多く保有しています。そのどれもが条件の良い求人であり、あなたの希望にぴったりの転職先が見つかるはずです。
一人での転職先探しが不安な場合はコンサルティングサービスをご利用ください。医療の現場を熟知しているコンサルタントが、ミスマッチのない転職先を提案します。
常勤医師に転職する場合も、非常勤医師に転職する場合も、最終的に転職の成功を決めるのは勤務先の職場です。
自分に合った働き方や雇用形態を選んでも、自分に合わない職場だと「転職に失敗した」と感じる可能性があります。そうならないよう、転職の際は専門家を頼ることをオススメします。
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