医師の先生方の中には、将来、美容クリニックへの転科を検討している医師の方もいらっしゃるかもしれません。
そういった方に向けて今回は、専門医資格の必要性や関連する学会を紹介します。美容クリニックに興味のある医師の方々にとって、資格や学会の選択がキャリア形成にどのように影響するかを解説します。
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美容クリニックは主に3種類に分類され、それぞれ異なる治療内容や施術を提供しています。以下はその3つの種類についての解説です。
それぞれの職場を詳しく見ていきましょう。
美容外科は外見の治療を行う美容クリニックです。たとえば、二重整形や脂肪吸引、豊胸などが挙げられます。クリニックには病院と違い病床がないため、すべて日帰り手術ができる範囲で行うのが一般的です。
また、大手クリニックの場合は、外科と皮膚科を同時に診ることもあるため、最初から最後まで患者が綺麗になっていくのをサポートできる喜びも感じられるでしょう。
美容皮膚科は皮膚科とは違い、美容目的で肌を改善する場所です。医療機器を用いたレーザーや医療ハイフ、光治療などが主な治療内容となっています。
基本的には医師が診察やカウンセリングを行い、施術は看護師が行います。中には糸リフトのような外科的な治療方法を用いることもありますが、この場合は医師が対応するのが一般的です。
美容外科のように1回で完了する治療は少なく、何度か通院してもらうことが多いため、患者様との信頼関係を築くためにもコミュニケーションが大切になってきます。
医療脱毛専門のクリニックです。常に最新の医療機器を取り扱うことが多いので、専門知識が必要になることもあります。
また、大手美容クリニックの場合は、脱毛だけではなく美容皮膚科と併設していることもあり、専門的な資格を持っているとオールマイティに働けるでしょう。
美容医療(美容外科・美容皮膚科)に従事するためには、医師免許が絶対に必要です。医師免許を持つことで、医療行為(手術、注射、薬の処方など)を行うことが法的に認められます。医師免許があれば、美容外科や美容皮膚科に従事することが可能です。
上記で医師免許が必須と記載しましたが、逆に医師免許さえあれば美容クリニックで働くこことは可能です。実際、美容業界が未経験の方に向けた求人もあります。
しかし、専門性が高い資格を持っていると、転職やキャリアアップに有利に働きます。
上記の資格について「美容外科」「形成外科」「美容皮膚科」に分けて詳しく解説していきます。
JSASは「Japan Society of Aesthetic Surgery」の略で、
『美容外科に関する研究並びに科学的知識および技術の普及発達と、美容外科の学術上の地位の確立を図り、併せて会員相互の向上・発展を求めることを目的に結成された学会』です。
昭和41年に設立され、令和4年時点で1,248名の会員が所属しています。
日本の医師免許を持ち、会員2名の推薦を受けた医師のみが入会できます。
参考:一般社団法人 日本美容外科学会(http://www.jsas.or.jp/)
JSAPSは「Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery」の略で、『形成外科学を基盤とし、美容外科に関心ある方のために、その知識・技術の交換、進歩をはかり、親睦と医道の向上を目指し、かつ国内外の関連学会および団体との連携を目的』として結成された、日本で唯一国際美容外科学会(ISAPS)に認められた学会です。
設立年は、JSASよりも10年ほど遅い昭和52年ですが、現在では約1350名の会員が所属されています。
日本の医師免許を持つ日本形成外科学会正会員資格者で、さらに学会評議員の推薦が得られた人のみが入会できるので、JSASよりも厳しい入会基準が設けられています。
特に「JSAPS」の審査は非常に厳しく、日本の形成外科専門医のたった“10%”しか認定されていません。
「JSAPS」に合格するために必要なことは、以下の2つです。
①最低でも5年間、日本形成外科学会が認定している医療研修施設において、形成外科に関わる研修を受けること
②形成外科に関わる研修を受けてその後、所定の専門医認定試験に合格すること
これが義務付けられています。
上記に合格することで「美容外科専門医」として、資格が認定されます。
参考:一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS(https://www.jsaps.com/)
形成外科とは、頭から手や足の先まで、身体の表面を中心に、さまざまな病気やけがの治療を行います。傷や変形をきれいに治すことを主な目的としており、顔や手足など身体表面の、ケガや顔面骨折、やけど、あざ、腫瘍、先天異常、皮膚潰瘍、ガンの切除・再建、乳房再建・美容医療などについて専門的な知識と診療技術を持ち、適切に対応する診療を行っていきます。
その中でも、形成外科の専門医資格は一般診療を行うための必須条件であり、これを取得した後それぞれの専門領域に進んでいきます。
現在の会員数は、約5300人でその内女性会員は約1,600人(30%)で外科系学会としては女性会員の割合は高く、その要因としては、美容領域に必須な診療科であるからだと考えられます。
参考:一般社団法人 日本形成外科学会(https://jsprs.or.jp/)
>>美容外科の専門医(美容外科医)になるには?資格や形成外科の経験がないとダメ?
1987年前身の日本美容皮膚科研究会が発足され、1994年に日本美容皮膚科学会に改名し、現在2811名が所属しています。主な目的として、健全な美容皮膚科学の発展を目標として、美容皮膚科学に関する研究および、その研究成果の普及、ならびに会員相互の交流をはかっています。
ここでは、皮膚の構造・機能や病態の基礎研究から臨床医学、さらに香粧品・美容機器までに及ぶ美容皮膚科学を研究対象としています。
一方で、専門医制度に関しては、2008年に日本皮膚科学会が”皮膚科専門医”の上に”美容皮膚科・レーザー専門医”の制度を発足したので、日本美容皮膚科学会では認定専門医制度が設けられていません。
参考:一般社団法人 日本美容皮膚科学会(http://www.aesthet-derm.org/)
レーザーに関する医学、生物学及び工学における研究と技術の向上のため、学術大会の開催等により、医学と医療の発展及び学術交流を図り、社会に貢献することを目的としている学会です。1979年に設立し現在1132名の会員が所属しています。
レーザー専門医になるには、基本領域学会(内科、外科、産婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、形成外科、麻酔科、整形外科、脳神経外科)の専門医を取得した臨床系正会員が安全教育講習会を受講し、専門医に合格することが必要条件になっています。
つまり、「美容外科」「美容皮膚科」においてのレーザー専門医とは、皮膚科・形成外科の専門医がレーザーに関する十分な知識(レーザーとその生体作用、治療の原理、臨床現場における正しい管理法と使用法など)を持ち、より精度の高い安全なレーザー医療を提供できる臨床医であると考えられます。
参考:特定非営利活動法人 日本レーザー医学会(http://www.jslsm.or.jp/)
2001年に医師ならびに医生物研究者らが中心となって前身の日本抗加齢研究会設立され、現在9000名の会員が所属しており、複数の分科会が存在しています。主な目的としては、加齢現象や老化の研究が進む中、老化の病的プロセスを予防する抗加齢医学を積極的介入する方法を基礎医学的、臨床医学的に追求して実践することにより、生活者のQOL(Quality of Life)の向上を図る。そして、抗加齢医療の提供により健康長寿を国民が享受し、老人医療費増加度の抑制、生産人口年齢の延長、労働力の確保といういわば国家戦略的な目的です。
ここで出てくる抗加齢医学とは、「健康な人のさらなる健康」を指導することを医療に加えた究極の予防医学です。つまり、元気に長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学ともいえます。
参考:一般社団法人 日本抗加齢医学会(https://www.anti-aging.gr.jp/)
美容クリニックで使用される薬や化粧品に関する知識を深める「美容薬学検定」は、美容皮膚科に従事する際に役立ちます。医薬品やスキンケア製品の成分を正しく理解し、患者に適切なアドバイスができるスキルを証明する資格です。
参考:NPO.薬学検定(http://www.yakugaku.or.jp/biyoken/)
上記で述べた資格がある方が、転職で有利になる理由を詳しく見ていきましょう。
美容外科や美容皮膚科では、手術や皮膚治療など専門性の高い施術を行います。専門医資格を持つことで、患者からの信頼が高まり、安心して施術を受けてもらうことができます。特に手術を伴う美容外科の場合、形成外科の専門医資格があると信頼性が大幅に向上します。
専門医資格を持つことで、美容外科手術や皮膚治療の選択肢が広がり、提供できる施術の種類が増えます。これにより、クリニックにおいてより多くの患者ニーズに対応できるようになります。
専門医資格を持っていると、他の美容クリニックや大手クリニックへの転職時に有利です。また、給与や待遇面でもより高い条件が期待でき、将来的に独立や開業を考えている医師にとっても強力なアピールポイントになります。
専門医資格を取得することで、特定の学会に所属できるようになります。これにより、最新の技術や治療法について学べる機会が増え、自己研鑽や技術のアップデートを続けられることが大きなメリットです。
ここまでで、美容クリニックに関わる学会やどの学会で専門医制度が設けられているのかを紹介してきました。今回紹介した学会以外にも、美容外科・美容皮膚科にはそれぞれの専門分野によって学会や研究会などが複数ございますので、自らが学びたい手技に合わせて入会・専門医を目指す方がいいのかもしれませんね。
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